自分が好みのタイプの引っ越し

日本の自動車メーカーには現在、世界的な不況、金融危機というものが今後どう収まるかということをじっと静かに見守っている側面がひとつ、他方では「待ちの姿勢」だけではいけないという部分、とくに環境技術は先手必勝だから、そのための投資などの準備をしておかなければならない側面もあり、そうした2つの戦略をどう使い分け、この危機を乗り切っていくかが求められていると思う。
いわゆる世界の自動車産業が、真のグローバル化に向かう中で、現在の金融危機のようなリスクに耐えられる体質を構築しながら乗り切っていこうという、そういう努力をこれから続けなければならない。
加えて、日本の自動車メーカーに求められているのは、優秀な大きな夢を措いて挑戦できるエンジニア、技術者、研究者、それと日本の強みである優れた多能工の人材育成、これをやはり今のうちにやっておかなければならない。
結論をいえば、「ビッグスリーは、もうかつての地位を回復することはおそらく不可能であろう」ということだ。
それに対して、「日本の自動車メーカーは、たしかに一時的に打撃を被り、トヨタのように現在のキャッシュフローが半分以上流失してしまうメーカーも出ているが、それは10~15年前のスタートラインに戻って、もう1回やり直すことを意味するだけであり、そのやり直しが効いたならば、世界の自動車市場である程度、主導権を撮ることも全く夢ではない」ということである。
また、ヨーロッパ勢に目を向ければ、欧州メーカーは公的資金を受けたりもしているが、しかし彼らは環境技術に非常に力を入れているし、それからEU全体がそちらの方向に向いているので、おそらく「今後は、新技術への挑戦を巡って、ヨーロッパ勢と日本勢との間でチャレンジをともなう競争が始まろうとしている」ことだと、理解すべきであろうビッグスリーはなぜ急激に崩壊したか?優遇され続けてきた米国自動車産業の従業員2009年6月1日、GMはニューヨーク州マンハッタン破産裁判所に、チャプター11(連邦破産法11条)を申請し上場廃止となった。
その後、40日間で破産手続きが完了し、GMの優良資産は新GMに売却され、新GMの株式は米政府が60・8%、全米自動車労働組合UAWが17・8%保有することで、再建が進められている。
GMの破綻については、しばしば労働組合UAWにその責任があるといわれることが多い。
とくに賃金コストが高く、健康保険や年金といった、いわゆるレガシーコストの負担の大きさからいって、これが経営の圧迫要因になるともいわれてきた。
GMやフォードの経営者が、その赤字の原因として真っ先に上げたのが、このレガシーコストである。
何しろGMの場合、医療保険は退職者の生涯全体をカバーすることになっているから、その負担は平均寿命が延びるほどに大きくなる。
笑うべきエピソードとしては、強精剤バイアグラの最大のユーザーはGMの退職者だといわれている。
とにかくGMは、医療保険だけでも、車1台当たり1500ドルを負担していて、これを年産500万台に掛けると750億ドルという途方もない数字となるのだ。
この負担は、日系自動車メーカー現地工場の5倍以上にもなるという。
これが日本ならば、国民健康保険制度があり、会社を退職すれば企業の健康保険組合から国の保険制度に移管できるが、アメリカには政府管掌の全国民対象の保険制度がないから、生涯、企業が面倒を見なければならない。
年金についても同様である。
またアメリカの自動車産業は、賃金コストの高さにも定評があり、ビッグスリーの場合、工場作業者クラスの時間給は70~80ドル。
日系企業の場合は~50ドルである。
平均年収に換算すると8万ドル近くになるから、日本円に直して年収800万円に相当し、主要産業別で比較すると、トップの石油精製に次いで2番目に相当する。
この時間給70~80ドルは、米国製造業の平均時給17ドル弱の4~5倍だともいう。
これだ自動車工場で何があったのか?けの高い賃金を維持しながら、よくこれまでやってこられたものだが、それは長期的に市場シェアが低下するなか、生産規模の縮小にともなう工場閉鎖や人員削減の交渉をUAWと優先的に行なってこられたからだ。
つまり、人員削減が可能だったからである。
この人員削減は、工場の生産集約による閉鎖、時に応じたレイオフと早期退職、さらに高い部品の内製率(約80%)を下げて50%くらいにし、部品事業部を切り離し(デルフアイへのスピンアウト)したり、若い従業員の採用をカットするなどのやり方で進められた。
人員削減は総動員で行なわれた。
その結果GMの従業員数は、1986年にほぼ90万人とフォードのほぼ2倍以上だったのが、2007年には25万人と3分の1まで減少し、フォードとほぼ同数までになった。
いうなればUAWは、時間をかけて人員削減に応じるかわりに、高賃金を維持してきたのである。
しかし、GMは破綻したわけだから、この高賃金、高レガシーコストは維持不可能である。
GMとUAWは、議会やアメリカ政府から、日本メーカー並みの賃金水準と低いレガシーコストを実現するようにいわれ、健康保険はUAWが責任をもって運営する財団に切り離し、賃金の引下げについても、UAWから同意を取りつけたといわれる。
GMを破綻させた「UAWとの労使関係」米国・ビッグスリーの世界従業員数推移(1977-2008年)ところで、GMは企業業績や生産性向上にはまったく連動しない高賃金と高レガシーコストを、なぜ破綻直前まで維持できたのか。
すでに見たように、GMとUAWは、この20年の間に従業員数を3分の1に減らすことで合意し、それと引き換えに高賃金と高レガシーコストを維持したわけだが、他にも理由はある。
GMとUAWの長年にわたる労使交渉には、いわゆるバーゲニングの労使関係と労使交渉で処理されてきたという歴史的背景があり、その中で生まれた先任権制(セニョリティルール)が関係している。
元来アメリカの労働組合は、技能工や熟練工、そして白人比率の高いAFLに代表される職種別組合に対して、1930年代73自動車工場で何があったのか?に入ると産業別組合が台頭してきた。
産業別組合は、非熟練工や黒人、移民を含み、自動車なら自動車、鉄鋼なら鉄鋼というふうに産業別に組織が分かれ、企業別の交渉よりも産業別に足並みを揃える交渉が優先されてきた。
例えば3年ごとの賃金交渉では、その産業の中の代表選手、例えば自動車ならGMが交渉に当たってきた(いわゆるパターンセッターという)。
そして、この交渉で勝ち取った貸金やフリンジベネフィット(年金、保険はこの中に入る)の水準を、他の企業にも及ぼしていくやり方である。
バーゲニングとは取引するという意味である。
バーゲニングは、労働組合代表による経営参加を認めるドイツ型や、企業ごとの生産性向上に連動し、職場ごとの労使協議を重視する日本型の労使交渉のやり方とは違う。
いわばスト権を背景とするバーゲニングパワーを使い、一種のゲーム感覚で取引条件を決めるやり方である。
バーゲニングの労使交渉では、自動車メーカーが高い利益を上げている時には有利な労働分配率を確保でき、その既得権を維持し、さらに追加したりできる。
反対に、自動車メーカーがシェア低下や構造的不況に直面した時には、組合側の譲歩が得にくいという問題がある。

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